使用楽器について

使用楽器は杉原広一氏制作のトマ・ロットTomas Lotのコピーを使用します。1735年頃に作られたオリジナルをもとに杉原広一氏が製作したものです。

T.Lotはパリ近郊ラ・クチュールのフルート製作家で、M.ブラヴェやJ.B.ヴェンドリングといった18世紀の名手たちも使っていたといわれています。ルイ15世も所有していたそうです。

テレマンは1737年にパリに旅行していますのでブラヴェとともに演奏した時にトマ・ロットの楽器と共演したのかもしれません。

当時は地域やメンバーによって基準となる音の高さ(ピッチ)が異なっていました。そのようなピッチの違いに対応するために、この楽器には替え管が4本ついていました。それぞれの替え管のピッチはおよそ①A=400Hz、②A=407Hz、③A=415Hz、④A=425Hz(この替え管は私のコピーにはありません)です。オリジナルはこの中で②と③の二本が良く使われた形跡があるそうです。今回私はは407Hzの替え管を使用して演奏します。

バロック時代のフルートの指穴はチューニングのために管の内部に向かって穴が広がっていきます。これをアンダーカットと呼びますが、この楽器のアンダーカットは独特なものです。普通は円錐のアンダーカットなのですが、この楽器は円錐の裾の部分にさらにもう一回削り込みがされています。これは普通の切削工具では不可能な工程で、おそらくスプーンのような形をした刃物を使って作業された、大変に手間のかかるものです。T.ロットさんにとって、楽器の響きに重要なものだったのでしょうか。

このような、18世紀の製作家の考えなどにも想像を膨らませて聴いていただけると嬉しいです。

管内部のようす

テレマン 《無伴奏フルートのための12のファンタジー》 全曲演奏会

フラウト・トラヴェルソ: 森本英希 日時: 2020年8月26日(水)18:30開演 会場:京都市文化博物館別館ホール こちらは上記の演奏会のための特設サイトです。 作曲家の情報やプログラムについての情報などを順次アップしていく予定です。